どこかの会議室。そこに集まるスーツに身を固めた人々。
どうも裁判員制度で呼ばれた裁判官たちが、とある事件について議論しているように見える。だが、議論が進むにつれ、どうも様子がおかしいことが伺えた。
裁判官たちは死者について話している。死者が生前おこした事件について。
すると議論を黙って聞いていた裁判長が判決を下す。
「彼の来世は“ミジンコ”である」
スーツの人々は裁判官ではなかった。言うなれば閻魔のような存在で、死者が来世、何に生まれ変わるべきかを話す会議だったのだ。日頃の行いが良ければ人間へ、悪ければ下等動物へと輪廻を遂げる仕組みらしい。
ある日、とある死者について議論が割れた。それは善とも悪とも取れる行いで人間へと輪廻させるかどうかの判断が下せないでいる。間違って独裁者や凶悪犯を生めば彼(女)らはクビを宣告され、神様になる道を閉ざされるからだ。
そのとき、まだ閻魔となって間もない女が根底を覆すような言葉を口にする。
「そもそも、人間に生まれ変わることって幸せなんですか?」
現世とあの世の間にあるグレーな世界。
白か黒か、はっきりと解決できないグレーな問題。
あいまいなこと、グレーなこと。それはきっと、大切なこと……。