「僕はいつからか「人」から「犬」へ退化していました――。
お手をした。お座りもした。3回まわってワン!とも言った。
僕は本気で、天変地異が起こるのを願った。
この鎖から開放されるのを待っていた。
その、僕の願いは叶う。
必死に走った。逃げに逃げた。そして道に迷った。
怖くなった。相当。最上級に。
僕は家に戻りたくて、死に物狂いで家を探した。
ようやく家に帰ると飼い主は、僕にお手をせがんだ。
僕は、お手をした。尻尾まで振って見せた。
そして鎖につながれた。
多分、僕の一生はこうやって続いていく……。
もう一度、天変地異を願ってみよう。
でもその時が来たら、僕はどうしたらいいのだ――。」