クラスでひとり、色覚検査にひっかかった。
「29」という数字が識別できなかったから。
笑われた。大いに笑われた。
雨日。
じめじめした部屋の中で
そんなことを思い出しながら
都築はハエと、飯を食う ― 。
■あらすじ
完黙症と言うしゃべる事が出来ない精神病を患った男。
彼は兄夫婦のもとで暮らしている。兄は弟の面倒を妻に任せっきり。
兄嫁は毎日毎日彼に語り掛ける。それでも一向に口を開こうとはしない…
そんな彼を心配して、現われたのは、幼い頃死に別れた親友だった。
親友は神様をつれてきたという彼の病気を治してもらえるようにと…
そんなときいつも優しくしてくれた兄嫁が家を出て行ってしまうことになる。
彼の閉ざされた心は解放されるのか、そして言葉を発することは出来るようになるのだろうか…