坂道のふもとにある自転車屋、浅井サイクル。
店の主人は坂道を見上げることが多い。
知らない人が自転車でその坂を下る。
あの人はブレーキをかけるのか、かけないのか。
知らない人が自転車でその坂を上がる。
あの人はペダルを漕ぎ続けるのか、あきらめて歩くのか。
自分の行く末を他人に託してみる。
それから主人は太陽を見る。くしゃみが出るから。
そうして何かをふっとばし、主人は店に戻るのだ。
■あらすじ
坂道の麓にある自転車屋。浅井サイクル。
主人は一度も恋をした事がない。
自分の意見も言った事がない。
趣味さえ見つからない。
そんな何の取り柄もない主人は、坂道を見上げる事が多い。
行く先が見えない主人は、自分の行く末を、坂道を自転車でかけ上がる他人に託すのだ。
あの人はブレーキをかけるのか、かけないのか。
ペダルを漕ぎ続けるのか、あきらめて歩くのか。
ある日主人は初めて恋をした。
そのとき主人は自転車にまたがり漕ぎ始めた。